半身への愛惜〜自覚せざる得ないこと





チーグルの森の奥・・・チーグルの巣にルークとティアは来ていた。


「みゅう、みゅみゅみゅうみゅう」
「ミュウ!ミュミュミュミュミュウ!」


「カワイイvv」


『・・・やっぱりなんかムカツク』


彼女たちはチーグルの会話をそれぞれの思いで聞いていた。
彼女たちはチーグルをただ帰すだけで良かったのだが、長老が引き留めたのだ。


「・・・我が同胞を助けてくれて本当に感謝する」
「いいえ、チーグルを救うのは教団の勤めでありユリアの遺言ですから」
「しかし、約束とはいえそなた達に迷惑をかけてしまった・・・そこでそなた達に助けられた者に季節が一巡りするまで、そなた達にお仕えさせよう・・・みゅうみゅう」


チーグルの長老はそういうと何かを呼び出した。




ポムン




呼び出された何かは音を立てながら、ルーク達の目の前に現れた。
さっきまでいっしょにいたチーグルだ。
チョイチョイと手招きをされて、呼び出されたチーグルはトテトテと歩み寄った。
長老は持っていたソーサラーリングを振り上げてチーグルにぶつけた・・・おそらく頭に引っかけたかったのだろう。



『・・・やっぱりこいつかぁああ』


「カワイイ・・・vv」


この瞬間、とっても見覚えのあるチーグルの正体がはっきりと分かってしまった。
いや、正確には分かっていたのだがルークは気がつかない事にしていたのだ




チョイチョイ


ヒョイ




チーグルはソーサラーリングを頭に着けることは出来ず、変わりに腰に抱えた。


「・・・僕はミュウですの。船で助けてくれてありがとうですの!」
「いいのよ」
「皆様のお役に立てるよう僕、頑張るですの!宜しくですのご主人様!ティアさん!」


ミュウはそういうと大きく手を挙げてティアをますます夢中にさせルークを少しながら懐かしく思わせた・・・どんな時でも自らを信じてずっと側にいたミュウを・・・


「宜しくねミュウ」
「・・・よろしく」
「はいですの!」


ルークとティアは、結局チーグルの恩でいっしょに屋敷に帰る羽目になった・・・







チーグルの森を抜けて、エンゲーブに来たルーク達は宿屋で今後の事を話していた。
本来ならタルタロスに連行され神託の盾に襲われているところなのだが、肝心のジェイド達とはチーグルの森で分かれてしまっている。


「これからどうするの?屋敷に帰る?」
「そろそろ帰らないと母上が倒れそうだし、帰るよ・・・」


ルークはそういうとボフンと音を立ててベットに埋もれた。
そんなルークの返答を聞いてティアは・・・


「そう・・・私もいっしょに行くわね。兄さんに会えるかもしれないし」


ティアの言葉を聞いて、ルークはベットから起きあがって手をさしのべて言った


「・・・わかった。これからもよろしくな、ティア」
「ルーク・・・よろしくね」


ティアは突然のルークの言葉に驚いたが直ぐに微笑んだ。
そしてそのまま、さしのべられた手を取ろうと手を出す・・・その時!





ーガオオオオ!!





「「!!!!!」」


宿に・・・いや、エンゲーブ全体に獣の雄叫びが響いたのだ
ティアとルークは顔を見合わせると宿を飛び出した。ミュウを道具袋に入れながら・・・





「うわあああ!!」
「助けてくれえ!」
「ぎゃあああ!」


「これは・・・」



宿を出てルーク達が見たのは死体と血と逃げる住民と血だらけになった・・・ライガの姿。


「ライガ!?どうしてこんな村に・・・」
「ティア!そんな事より村の人たちを避難させないと!」


呆然とするティアに対してルークは渇を入れた。
その渇でティアはハッと我に返り、住民を避難させるためにライガに向かって譜歌を詠い始めた。


「あんたたち何をしているんだい!早く逃げな!!」


俺たちがライガに攻撃したその瞬間、聞き覚えのある声が聞こえた。ローズ夫人だ。


「俺たちがライガを引きつけます!その間に住民を避難させてください!!」
「ちょっとあんた達!?」


ルークはローズ夫人の静止を聞かずに、ライガへ立ち向かって行った・・・
ローズ夫人は意を決し、住民の避難をし始めた。


「俺がライガを引きつける!その間にティアは譜歌を頼む!!」
「分かったわ!」


ルークはライガを剣技で引きつける。
そしてティアはその間に譜歌を・・・ナイトメアを詠って少しでもダメージを与えた。


「くそ!このでっかいライガ!何なんだよ!!」


それを何回も繰り返して、住民を避難させる時間を作った。
二万ほどの住民を避難させるにはまだ足りない時間だが・・・


「ルーク!たぶんそれはライガクイーンよ!!」
「ライガクイーンだと!?なんでこんな所に来るんだよ!?」
「たぶん子供のために餌をとりに来たのよ!確か今は繁殖期のはずだから!」


ティアはそう叫ぶとまた譜歌を詠い始めた。
ルークは剣を振るいながら、チーグルの森でイオン達を放って置いてきたことを後悔していた。
イオン達を放っておかなければ、エンゲーブはこんな事にならなかったと思ったからだ。


「アビアースゲイル」
「受けろ!雷撃!襲爪雷斬!!」


ティアの援護でFOF攻撃を繰り出したルークだったが、風邪属性の耐性があるライガクイーンにはあまり効いていなかった・・・


「くそ!あんまり効いてねえ!!」
「やばいわね・・・」


ライガと戦い初めて小一時間・・・ライガは倒れるどころか暴れ回るばかりだ。


「くそ!誰でもいいから何とかしてくれ!!」
「何とかしてやろう」
「「え?」」


突然聞こえた言葉にルーク達は振り向いた。
村人は避難しているはずなのに、戻ってくるわけないのだ・・・


「せ・・・師匠・・・・」
「兄さん・・・」


予想をしていなかった事態にティアとルークは呆然とした。
助けは来ないだろうと思っていたからだ・・・いや、来るとしてもマルクト兵あたりだと予想していたから・・・


「久しいなティア。ルーク」
「どうして・・・ここに?」
「導師とお前達を探している時にローズ夫人という方に会ってな、助けて欲しいといわれたのだ。特徴を聞いてみれば・・・案の定お前達だったがな」


ヴァンはそういうとライガクイーンに向かっていった。
ヴァンは己の経験と剣技であっという間にライガクイーンの体力を削っていく・・・


「すごい・・・」
「・・・」


そんなヴァンの戦いにルーク達は手も足も動かず、ただ・・・ただ・・・見ることしか出来なかった


「これで終わりだ・・・ネガティブゲイト」
「グアアアアアア!」


そしてヴァンはルーク達が手も足も出なかったライガクイーンをたった一人。遙かに短い時間で倒したのだ・・・
ルークは己の力のなさを恨むしかなかった。





後書き
 師匠が登場!!ヤッホー!!
 っていうか、師匠がアリエッタのママを倒しちゃった・・・
 この先、どうなるのかねぇ?