半身への愛惜〜変わらぬ懐かしき者達





「んー!やっとケセドニアだ。早く領事館に行ってバチカルに行こうぜ」
「そうね・・・兄さんもそれでいい?」
「あぁ・・・構わない」


ルーク達はケセドニアに来てもやることがないので、そのまま領事館へと向かった。
領事館に向かう途中ルークは変人に襲われそうになったりしたがミュウとティアの猛攻によりその危機を逃れた。










「え?船が出ないってどういう事だ?」


領事館に着いたルーク達は思いがけない事態に驚きを隠せないで居た。


「私目にも分かりませんが・・・インゴベルト王がバチカルの港を封鎖してしまいまして」


領事館の方も困っているらしく領事館内では慌ただしい雰囲気になっていた。
しかしルークはこのままだとアッシュに会う最後のチャンスが無くなってしまうという焦りが出てきたため、どうするか考えるのに精一杯だった。


「どうしよう・・・これじゃあ砂漠をわたっていくしかないよな」
「はい・・・もしくは船が出るのを待つしか・・・」


それから長い沈黙がたった。


「・・・一晩待ってみたら?」
「・・・そうだな、一晩待ってみるか」
「港が空いたらお知らせいたします」
「頼みます」


こうして領事館から出たルーク達はキムラスカ側の宿屋に泊まったのである。


その夜・・・


「・・・眠れない」


領事館の焦りが出たせいかルークはいつまでたっても寝付けないでいた。


『気分転換でもするか』


ルークは海でも眺めれば気分がスッキリするだろうと考え宿屋を出た。もちろんカツラをかぶることを忘れずに


「・・・月の光が海に当たって綺麗だ・・・」


密かに輝く月の光に照らされる海に静かにうっとりと眺めながらルークはつぶやいた。
空気の・・・音素の一部になりそうなくらい静かにただ見つめている彼女は儚くて恐ろしく見えた


キィン


「・・・・あ」


どれくらいの時が経ったのか一つの流れ星が夜空に瞬いた。
その光景は海に映し出されルークに一つの感動を覚えさせた。


『流れ星・・・初めて見た』


キィン


キィン


感動していると次々と水面に流れ星が映し出された。
流星群だ。


「・・・・・そうだ。お願いしなきゃ」


流れ星にお願いをするという事に内心ルークは自分は馬鹿だと想っていた。
「死ぬために作られた偽物の自分に願いなど聞き届けるはずなんて無いのに」と思っていたからだ。
そんな考えを持つルークがそれでもお願いをするのはたった一人だと不満があるからだった。たった一人でアッシュの命を救うという事に・・・


「たのむ・・・俺に・・・俺に大切な人を守れる力をくれ・・・どうせ無くなる命なんだ。たった一つ世界が驚くような事をしてもいいだろう?」


ルークはそう言うと、宿へと向かった。
アッシュに会うために・・・アッシュを救うために。




「グランツ謡将!!!」


その次の日。
ルーク達は船が出せるかを聞きに行くためキムラスカ側の領事館に行くときだった。
聞き覚えが有りすぎる声が聞こえたのだ。
ルーク達は聞き覚えが有りすぎる声の主を捜すために足を止める


「ガイではないか・・・どうしたのだこんな所で」
「陛下の命令でちょっとな・・・」


ガイは走ってきたのか息を切らしていた。
奥からジェイド達が来るのが分かる


「そうか・・・」


ヴァンはそういうと後ろにいるルークをちらっと見た。
つられてガイも見る。
ルークはちゃんと自分が分かるかどうか心配なようでジッとガイを見ていた。


「グランツ謡将・・・その人は?」
「・・・・・・分からないのか?」


信じられんとヴァンは顔に出していた。
ルークもシュンと肩を落とし顔を俯かせている・・・かなりショックを受けているようだ。
その光景を見たガイはやりすぎたか?と小声で言うと


「分かってるから聞いているんだが・・・な?ルーク」
「!・・・ガイ・・・」


バッと顔をガイに向けた。
ガイはニコニコとルークの頭を撫でている。


「お帰りルーク」
「・・・っ!ガイ!!」


ガバッ


その瞬間ルークはガイに飛びついた。
ガイはバランスを崩しながらもしっかりとルークを受け止める。
追いついたジェイド達は極度の女性恐怖症のガイが見知らぬ(見知っている)女性を平然と受け止めている光景に驚きを隠せなかった。


「が・・・ガイがお、女の人を受け止めてる・・・」
「し、信じられませんわ・・・」


その光景が信じられないのかアニスとナタリアは思わず口に出している。
その声に気がついたルークはガイから離れナタリア達に顔を向けた。


「あれ?ナタリアじゃん。どうして此処にいんの?キムラスカに居るはずじゃあ・・・」
「ど、どうして・・・私の事を・・・あなたはいったい?」


ナタリアは驚きのあまり地面にぺたりと座ってしまった。
ガイはあきれてナタリアに言った。


「おいおい・・・未だ分からないのか?ルークだよルーク」
「へ?」


予想もしていなかった答えが出たナタリアは信じられないと顔で訴えていた。
それを見たルークは変わらないなと思いつつかぶっているカツラを取った。


「・・・これで満足か?ナタリア」
「・・・・ルークですわ」


信じられないと言いながらナタリアは立ち上がる。
そんなナタリアを見ながらルークはニッコリとジェイド達に向かって笑った。「久しぶり。ただいま」という意味を込めた笑顔を。


「・・・・・」


そんな笑顔をするルークを少し目を細めながらヴァンは見ていた。
ルークの変わりように疑問を持ちながら・・・









後書き。


あれから考えて結論を出しました。
ルーク死ネタにします。
元々「愛惜」の意味には失いたくないという気持を強く持つという事です。
別れたくないというという意味もありますが、元々この半身への愛惜というタイトルには
半身・・・つまりアッシュを失いたくないというルークの気持ちを表したものです。

自己満足でもアッシュを助けたいというルークとルークを憎んでいるアッシュ。
ルークに疑問を持ち始めているヴァンにルークを信用していない仲間。
そんな中でのルークを書いていきたいので、死ネタにさせていただきます。
長文を読んでいただき、ありがとうございます。